karamaru: 2010年1月アーカイブ

こんにちは。講談社BIZのからまるです。

一昨日来、ウェブで話題を独占した感のある、iPadと名付けられたアップルの新タブレット型PC。映像をちらっと見る限り、からまるも愛用中のiPhoneの巨大版のように見えたのですが、実情はずいぶんちがうようです。

昨日、夜のニュース番組で紹介していたのは、電子書籍を見るソフトの美しさです。本棚のデザインがキレイだし、本のページをめくる感じが爽快そうで、かなり快適なインターフェイスになっているように見えました。

そして、この電子書籍もiTunes Storeで売ることなるのでしょう。そうすると容易に想像できてしまうのは、今現在、iPhoneで起きているアプリのゴールドラッシュと同様のことになるかもしれないということ。iPhoneのアプリにくらべれば電子書籍のプログラムなんてはるかに簡単なのでしょうから、本を出したい人は、いくらでも自分の本をiTunes Book Storeで売れるようになるのかもしれません。

そうなったら編集者は、アワワワ要らないじゃん!(ー'`ー;)

Amazon KindleとiTunes Book Storeは、流通も販路も一般に開放したところが出版界にとって衝撃的だと思います。水は低きに流れる。日本にどういう形で広まるか、どう対応するか、出版界のトップの方々が知恵を出し合っているのでしょうから、それを見守るとしても、個人個人の編集者が生き方を考えないといけないのが今年のような気がします。

こんにちは。講談社BIZのからまるです。

先日、のりたまがご紹介した異色のコンサルタント松永修岳さん。松永さんが主催する毎年恒例の開運新年会に、新刊『運の管理学 人生に「結果」をもたらす幸せの方程式』のお披露目も兼ねるということで、からまるとのりたまは参加させていただきました。昨日夜、白金台の八芳園の大宴会場でした。

松永さんは、19歳の頃から奇門遁甲、風水、四柱推命などの運命学を学び、数々の修行・荒行を経て、究極の荒行と言われる千日回峰行で開眼したそうです。修験道・空海密教の大行満大阿闍梨でもあります。現代科学の最新データを基に、脳科学や心理学と奇門遁甲などの運命学を統合した独自の理論体系「ラックマネージメント」を駆使して、現在、経済界、政界、スポーツ界の錚々たる名士たちのコンサルタントを務めているのですが、それだけに集まった来賓陣が、いろんな意味でスゴイ。

何と言っても、WBCチャンピオン、亀田弘毅選手に

 

「開運」のオーラ

 

が漂っていましたね。壇上でたいへん丁寧なショートスピーチをしていて、そこに松永さんの力が働いていることを感じさせました。アントニオ猪木さん他、格闘技界の大物たちがたくさん集まる会場がひときわ華やいだ瞬間でした。

本のお披露目でもありますので、『運の管理学』の表紙画像を映し出した巨大スクリーンをバックに、からまるも「みなさんのお力で大きく、大きくこの本を育てていただきたい」と壇上から猛アピールしたのですが、司会進行者の粋なはからいで、ちょうど新年会がもっともだらける時間帯にしてもらったため、200人もの人を前にして壇上から話したわりには緊張しませんでしたし(それまでに呑みに呑んだワインのせいでもありましょうが)、ほとんど誰も聞いてくれていないようで、ほっとしたのか何だかよくわからないままに、本の販売要員として飲まず食わずで働いているのりたまを尻目に、豪華フレンチ料理を楽しんだのでしたヽ(^。^)丿

こんにちは。講談社BIZのからまるです。

いろいろお知らせしたい情報が多くて、すぐには書けなかったのですが、先週ニュースになった、アマゾンさんがキンドルで出版するときの印税を70%にし、販売価格を日本円で1000円以下に設定すると発表したのは、本当に衝撃的でした。むろん、まだ米国だけで、6月30日からだそうですが、からまるはこのニュースを見た瞬間、今年の出版界は昨年よりももっともっと深いところでヤバイことになるな、と背筋が寒くなってしまいました。

さまざまな例外がたくさんありますが、通常の印税率は10%ですね。その7倍もの印税が著者の方に支払われるなら、そっちを選ぶ人がいるのは当然だと思います。

けれども、アマゾンさんはキンドルで販売チャネルを寡占できても、日々からまるたち編集者が悩んでいる本の企画や構成、タイトル付けなどの作業はしないのでしょう。そうすると、その部分の価値、つまり印税60%を遺失してもいいと著者に思っていただける価値を編集者は提供できないと存在自体が不要になるということに(思考実験としてかなり極端に考えると)なってしまいます。

また、新書を除く単行本の販売価格はだいたい1200円から1600円くらい。それを1000円以下にするということは、販売価格そのもので競争できるところまで何かのコストを削るか、逆に何かの付加価値を提供しないといけないのでしょう。

でも、話題書の『フリー <無料>からお金を生み出す新戦略』(クリス・アンダーソン著)が説くように、究極の価格競争は、たとえば本を100円で売ることではなく、本をタダで配布することしかありません。からまるたちは、

 

無料経済研究会

 

でも結成して、対応策を考えないと生き残れないのかもしれませんね。

この話題は回を改めて。。

こんにちは。講談社BIZのからまるです。

いよいよ来週火曜日発売のニコライ・モロゾフさんの話題本『キス・アンド・クライ』を盛り上げようと、先々週に講談社で行った共同記者会見の様子を中心にあちこちでモロゾフさんを撮った映像を使ったPRショートムービーを作りました。

それをユーチューブにアップしているので、もしよろしかったら見てみてください。予算や権利の関係でスーパーすごいムービーではないのですが、きちんと作り込まれています。音楽は制作者のオリジナル作曲なんですよ。

こうしてPRムービーをユーチューブにアップする宣伝方法は、少なくともからまるは初めての試みです。奏功するのかどうか、一つの実験としても楽しみなのです。

 

さて。。。

 

昨日は、『キス・アンド・クライ』の話題が「週刊ポスト」「AERA」に掲載され、また日本テレビ系の夜の報道番組「ゼロ」で放送された安藤美姫特集の中で文章の引用付きで紹介されました。その二番目に引用された、

 

「喜びあふれるときも、悲しいときも、フィギュアスケートが美姫の人生そのものであることを彼女に知ってほしい」

 

というフレーズは、この本の白眉の一つなんです。ほかにもたくさん名フレーズが散りばめられ、さすがに芸術家肌の名コーチの言葉だなと思わせてくれます。

「AERA」は翻訳してくれた大野和基さんが書いてくれましたので、当方の意図がシャープに反映されているのですが、対照的に「週刊ポスト」はとてもイジワルな書き方をしてくれちゃいました。

 

――同書の内容を知る出版関係者が語る。「(中略)昨年、『週刊ポスト』が報じた"安藤との同棲生活"についても触れているかと思ったのですが、単なる自慢本という印象で拍子抜けでした」

 

......って、同棲生活の本なんて誰が読みたいんやろか。たしかにそういう期待をする方にとっては思い切り拍子抜けするでしょうから読んでいただかなくて結構ですが、でもさすが週刊誌です、きちんと日本スケート連盟の橋本聖子会長にこの本についてコメントを求めています。橋本会長は、、

 

「あれね......(と顔を曇らせる)。まだ中身を知らないんですよ。内容を見てからにさせてください」

 

とおっしゃったそうです。顔を曇らせたのは記者の方が唐突な質問をするからだと推察いたしますが、こうして連盟トップに当たり、しかも講談社での記者会見の写真を今まで取り上げていただいたメディアのどこよりも大っき~く掲載していただいたことに感謝していますヽ(^。^)丿

こんにちは。講談社BIZのからまるです。

ビジネス書大賞.jpg畏れ多くも実行委員の一人として携わった、オトバンクさんディスカヴァー・トゥエンティワンさん共催の「ビジネス書大賞 Biz-Tai 2010」のムックができまして、本日発売となりました!

大賞にナシーム・ニコラス・タレブさんの『ブラック・スワン』(ダイヤモンド社)が決まったことは昨年末にご報告しましたが、皆さんの投票数で大賞候補を決めましたので、『ブラック・スワン』と同じ投票数を集めた本が他に2冊あるのです。その結果とコメントも掲載したほか、1票でも投票があったもの全250冊をすべてコメント付きで掲載しているのがスゴイです(ディスカヴァー・トゥエンティワンの事務局の方々、本当に編集お疲れさまでした<(_ _)>

でも、この250冊のうち、講談社BIZから出した本は4冊しかありません( ̄□ ̄;)(このダメな事態の打開がこれからの課題だなあ)

まず、ベスト50にランクインした、

山口絵理子さんの『裸でも生きる2』

女子勉さんと3人のツイッター投票の方々、どうもありがとうございました<(_ _)>

あとはみんなランキング圏外なんですが、、、

小宮一慶さんの『一流になる力』

旭屋書店営業本部の北川英樹さん、それにディスカヴァー・トゥエンティワンの干場弓子さん、どうもありがとうございました(「内心、「やられたかな?」と思った」というコメントには感激いたしました)。

徳川家広さんの『バブルの興亡』

水野俊哉さん(ご無沙汰しています)、どうもありがとうございました<(_ _)>

原尻淳一さんの『30過ぎたら利息で暮らせ!』

ツイッター投票の方、どうもありがとうございました<(_ _)>

次回のビジネス書大賞にはもっときちんとライクインしないと!!

お久しぶりです。安藤美姫ちゃんが好きなのりたまです。運の管理学.jpg

あの!本田健さんがプロデュース、「運」の専門家の松永修岳先生が執筆という豪華キャストでお届けする『運の管理学 人生に「結果」をもたらす幸せの方程式』がやっと校了し、2月4日発売となりました。

著者の松永先生は、だれもが知っている某有名スポーツ選手や経営者などの運のコンサルティングを行っています。運が良くなる秘訣のほんの一部をご紹介すると......


部屋の使わないものやガラクタを30パーセント捨てる気持ちでそうじする。


寝るときは部屋を真っ暗にする


温かいものを食べる習慣をつける


つきあう人を変えてみる

 

本田健さんも松永先生のアドバイスを実践したら、久しぶりの大ベストセラー『一瞬で自分を変える法』が生まれたそうです。のりたまも今年後半、編集作業の合間に先生の教えを実践してみると、次々に良いことが起こりました(内容は秘密です......)。

クールな装丁は、ベストセラー連発で活躍中のタイプフェイス・渡邊民人さん。開運のお守り「秘符」の紋様がデザインされていて、購入した方に幸運が訪れる、お得な仕掛けです♪

2月に丸善丸の内本店さんで、松永先生&本田健さんとのトークイベントを企画中ですので、正式に決まり次第、こちらでお知らせします!

こんにちは。講談社BIZのからまるです。

連日フィギュアスケート祭りをしていますが、忘れちゃいけないサムライブルー。今年はサッカーのワールドカップイヤーでもあります。

214601-2.gifのサムネール画像のサムネール画像それで、昨年、本大会で日本と同じ組に入って俄然注目を浴びている欧州の強豪、オランダサッカーについて書かれた名著、『オレンジの呪縛 オランダ代表はなぜ勝てないか?』(デイヴィッド・ウィナー著、忠鉢信一監修、西竹徹訳)は「ワールドカップ関連本」じゃないですか!と強引に重版を販売部に迫ったところ、本当に重版することになりました!

 

初版発売から1年半ぶり!

めでたいヽ(^。^)丿ヽ(^。^)丿

 

現在、ワールドカップに照準を合わせた新オビを作成中です。

聞くところによると、岡田ジャパンはまとまりがいいようですね。2006年ドイツ大会のジーコジャパンはチーム内に深刻な対立があると言われて、そのために盛り上がったところがありました。今のチームはそういう切り口でマスコミで話題になりにくいせいもあるのか、あるいはたんにサッカー人気が落ち目なのか、日本代表戦のテレビ視聴率が下がり気味で、先日のアジアカップ最終予選のイエメン戦のように(現地事情が許さなかったのかもしれませんが)ライブ放送がなかった試合もありました。

しかし、からまるは岡田ジャパンが目標に掲げる本大会ベスト4を信じて、応援してますよ!

こんにちは。講談社BIZのからまるです。

本日はちょっと話題を変えまして(^_^;)

民主党の小沢一郎幹事長が対決姿勢を鮮明にしたことで、東京地検特捜部との因縁の関係が連日マスコミを賑わせていますね。小沢さんが自宅に国会議員を100人以上招いて行った新年会の模様もそうでしたが、今回の角突き合わせる検察との対決でますます、小沢さんが毎年欠かさず命日に墓参りするという故田中角栄元首相とダブって見えてしまいます。

でも、毎日マスコミに登場する「検察情報」なるものを、皆さんはどうご覧でしょうか。石川議員を逮捕する環境作りとしては完璧に作用したかに見えますが、異常性を感じないわけにはいきません。

web用特捜崩壊.JPGのサムネール画像のサムネール画像のサムネール画像のサムネール画像というのも、昨年4月に出した産経新聞記者の石塚健司さん著『「特捜」崩壊』が指摘した、現在の地検特捜部の「風向きを読む劇場型捜査」が、今回まるで牙を剥いたように見えるからです。どうして官僚の答弁禁止などを盛り込む国会法改正案を審議する国会が開く直前に逮捕劇があったのか、考え出すと陰謀論がひねり出せそうで、事実、これは官僚対民主党政権の権力闘争なのかもしれませんが、もしそうだとしたら、「政治とカネ」で世論操作をしているように思えてきてしまいます。実際、新聞社には、こういう報道に対する疑問の声が読者から寄せられているそうです。

『「特捜」崩壊』は元検事の郷原信郎さんが読んでくださって推薦文をお寄せくださいました。曰く、

 

――「特捜捜査」の危機的な内実がここに示されている。

 

また、お名前を明かせませんでしたが、マスコミにもよく登場する元東京地検特捜部幹部は、石塚さんの本書での取材で、こうコメントしていらっしゃいます。

――「最初に描いた筋書きに強引に当てはめて事件を作っている。恫喝的な取り調べが度を超してている」

この本が書かれた当時と今では、特捜幹部の顔ぶれが変わっています。新しい態勢がこうした疑問を杞憂に終わらせてくれるといいのですが。。

本日は特別編です。1月15日に講談社で行われたニコライ・モロゾフさん『キス・アンド・クライ』出版発表記者会見の一問一答編集版をお届けします。

 

Q 日本人選手が外国人選手よりいちばんすぐれていると思うところは?

A 日本の選手というのは、非常にスケーティングに向いている体をしていると思います。いいスケーティングができる。重心が低いので、ジャンプが跳びやすいんですね。黒人選手が陸上の短距離などでスピードを出せるように、筋肉がすごくクイックに反応するんだと思います。だからジャンプに向いているんだと思います。
もう一つ言えるのは、日本人は、私はディシプリンと言いますけれども、非常に努力する姿勢を持っている。規律正しいということでしょうか。小さいときから規律の中で育っていることが影響しているのだと思うんですけれども、これをやれということをちゃんと聞いて、やります。
アメリカやヨーロッパの選手の場合、十五歳や、十六歳の年ごろですと、練習しろと言っても映画に出かけるだとか、友人と遊ぶだとか、スケート以外に熱心になってしまって、なかなかスケートの練習でプッシュするのは難しい。ところが日本人は非常に規律を持って、自分を戒めながら練習をするところがあります。
また、私はこれをナビゲーションシステムと呼んでいますが、皆さん、ちょっと想像してみてください。猫をポーンと投げますと、ちゃんと両足で、四つの足で着地しますよね。日本人の選手も同じようにジャンプを跳んだあと、必ずきちんと着地できる。そのジャンプを下りるうえでのフィーリングがよく、いい勘をしているんだと思います。だからジャンプがすごく自然に跳べて、そのジャンプに長けているところが、最近の日本人選手のいい結果につながっていると感じています。

 
Q コーチと選手のベストの関係とはどのようなものか

A その質問に答えるのは、そうたやすいことではありません。今、私はアメリカで仕事をしていますが、最高と思うコーチとスケーターとの関係は、ロシアでのみしか見たことがありません。
日本では選手がよくコーチを替えるという印象を受けています。ちょっとでも悪い成績を出してしまうと、親御さんがすぐコーチを替えてしまう。これは実はアメリカでもよく見られます。それだけのお金を払っているからということなのかもしれませんが、本当に一番高いレベルでの限られたところでしか、コーチと選手の良好な関係というのは見いだせないのではないかと思います。
それは、コーチと選手が同じ方向を見て、同じゴールを目指して、そして同じ結果を目指しているということです。つねにコーチが自分を後押ししてくれているんだと選手が感じられること。一緒にいい成績が出れば喜び、悪い成績が出れば、もちろん悲しみますけれども、そこでコーチの仕事というのは、なぜそうなってしまったのか、その原因を突き止めることだと思います。
私は何かうまくいかなかったときは自分自身を責めます。何を間違えたのか、と。成績が思うように出なかったときに、ジャンプをしなかったからだ、もっとスピードをと言ったでしょうなどと選手を責めるコーチを私はよく目にしますが、何かがうまくいかなかったときは、九割がた、コーチのミスなのです。選手に何をするべきなのか、どこまで練習でプッシュするのか、あるいはやめさせるのか、次の日は何を練習させるか、そういったことまで指導するのがコーチだからです。
私はよく自分の仕事を医者の仕事に例えます。それも外科医です。心臓手術をした場合に、失敗したら、その人はもう命がないわけですけれども、私たちも同様で、失敗してしまうと、選手生命がなくなってしまいます。
ですから、安藤美姫選手が世界選手権で優勝したら、さらにいい成績を収めなくてはならない。織田信成選手も悪い成績が出た場合には人生が変わってしまいます。それだけ大きな責任を担うのがコーチだと思います。だからこそ、コーチと選手のあいだというのは、オープンで信頼関係が醸成できていないと、うまくいかないと思います。

 

Q 世界選手権優勝後に安藤美姫さんと、どういうところに力を注いだのか

A トリノ五輪直後のことに少し戻りますが、あの当時、私には浅田真央選手のプログラムの話もありました。私は安藤選手を選んだのですが、それは私が難しいチャレンジが好きだからです。何か問題を抱えている選手のほうが、何でも簡単に、問題なくスケートをやってしまうような状況よりも、自分としてはおもしろいと思ったからですけれども、そういった大変な状況に自分を置きたいと思ったんですね。年齢的にも、彼女はとても難しい状況で、とてもスケーターとは思えない格好をしていて、私は初対面のときスケーターだとは思わなかったくらいでした。
そんなこともあって、安藤選手の指導を始めた一年目で、世界選手権で優勝できた。しかし、その直後に非常に親しかったお祖母さまを亡くされたということで、彼女はもう滑りたくないと思うくらい、つらい時期がありました。
すごく苦しんだシーズンだったのですが、今シーズンに向けては、ある意味ではそのつらさも良かったかもしれないと思っています。というのも、毎シーズン、毎シーズン、ベストな形で調子がいいということはありえません。何か問題を抱えて、苦しんで、そこから抜けきって、成長したときに、非常にいい、安定したシーズンを迎えることができるわけですから。

 

Q 安藤美姫選手は、七年前に四回転を大会で下りて以来、練習では跳んで下りていますが、なぜ大会でやらないのか。今後、五輪に向けて四回転をやらせるということはあるのか

A 彼女はすでに女性スケーターとして初めて四回転ジャンプを成功させたということで、ギネスブック入りを果たしています。それで、ちょうど一ヵ月前でしょうか、美姫が僕にこう言ったんですよ。ソチオリンピックにも出たいと。初めて四回転ジャンプをオリンピックで決めた女性になって、ギネスブックに載りたいから、と。
彼女が練習で四種類の四回転ジャンプを決めているのは、私自身も見ていますし、昨年のグランプリファイナルでも四回転を跳んでいます。クリーンなフリーを滑りましたけれども、彼女は最終的に六位に終わっているわけですね。やはりシステムの関係でダウングレードされてしまったことが響きました。四回転として跳んだのですが、それだけポイントを失ってしまいました。これが古い採点方式であれば、テクニカル点で五・九や六・〇を打ち出すような内容だったんです。それが、三つのジャンプで
ダウングレードされてしまいました。
練習ではもう跳べていますし、必要とあればプログラムに入れることも考えられますけれども、今まで必要がなかったので、四回転を入れてこなかったわけです。クリーンなプログラムさせ滑れば、安藤選手は四回転がなくても、それだけの結果がついてくる選手だということです。
もう少し付け加えますと、ほかにもたくさん、安藤選手は練習しなくてはいけない課題があったからというのも理由の一つです。毎日、四回転ジャンプだけ練習していれば、どの大会でもきちんと下りられたかもしれませんけれども、やっぱりほかの要素をそれだけ練習してこなくてはならなかった。四回転をいくら下りていても、スピンやスパイラルでポイントを取れなかったら、意味がありません。
もう彼女も十五歳の若いスケーターではありませんから、エレメンツ一つひとつに力を要する。そして、プログラム全体をまとめていかなくては評価が出ないわけですから、そちらのほうに力を注いできたという背景があります。

 

Q あなた自身が大変感情豊かな方だと思う。この本の冒頭でも精神面のコントロールということを大変強調しているが、こういう全人格的な指導を行ううえで、あなた自身の感情が豊かであるというのは、どのように影響していると思うか

A 感情豊かと言っていただくのは嬉しいですけれども、感情豊かなのではなく私は単に競争心があるのだと思います。自分の教えている選手にはぜひ勝ってほしいという気持ちがすごく強いんですね。私のコーチ仲間には、大会に行って、ビールを飲めれば、それでいいなんていう連中もいますけれども、私はもう二十四時間、大会のことで頭がいっぱいになってしまいます。本当に楽しめないんですね。そのことでいっぱいで、つねに大会でどうすればいいかということを考えています。
やっと大会が終わって、ほっとする間もなく、もう次のことを考えなくてはいけないので、感情的ということではなく、あくまでも自分はその競争心が高いところにあるのかなという気持ちでいます。
ただ、これはやっぱりコーチとしての性(さが)でしょうか。何度か、疲れきって、やめようと思ったことが実はあるんです。アメリカに帰って、自分の教え子ではない、ほかの先生の子どもたちを見れば責任もないから、それでいいやなんて思って二、三週間やってみると、すごくつまんなくなってしまいます。飽きっぽいんですね。やっぱり選手と一緒に勝っていきたいという気持ちになるんです。

 

Q 本の前書きに、勝つための必要な条件を理解しているというふうに書かれているが、一ヵ月後のオリンピックに向けて、安藤選手、織田選手が勝つために必要な条件とはどのように考えているのか

A もうオリンピック直前なので、変えられることは実はもうないと思うんです、この段階で。ですから、今はその質問には答えが出ないと言ったほうが正しいかもしれません。オリンピックが終わったあとに、もちろん喜んでお話ししたいと思いますけれども、今はどの選手に対しても、健康でいてほしい。そして、怪我なく本番を迎えてほしいと思います。

 

Q 自らのコーチメソッドに、タチアナ・タラソワが与えた影響は大きいのか

A もちろん私がコーチという職業を始めたのは、タチアナさんの下でした。もう彼女の下を離れて六年経ちますし、タチアナ先生はどちらかというと、今はロシアでテレビ関係の仕事などのほうが忙しいので、お互い違う道を歩んできているわけですけれども、やはり彼女はたくさんのことを教えていただいたと思います。
私が彼女の下に入ったときには、すべてのことをなさってきていた偉大なコーチだったわけですけれども、そのメソッドをすべて惜しみなく教えてくださったということでは感謝しています。今はもう、そこから私は自分の道を歩み始めておりますし、彼女が始めたこと、私にしてくださったことを、同じように今度は私が引き継いでいかなくてはいけないなという、そういう気持ちでおります。

 

Q 安藤選手と織田選手が五輪で優勝もしくはメダルを取れる可能性はどれぐらいあるのか

A 金メダルを皆さんが期待していて、質問も出るかと思っていたんですけれども、オリンピックでの金メダルというのは、そんなに簡単なものではないとしか、私には答えることができません。荒川さんが金メダルを獲ったので、日本の方は皆さん、また金メダルを考えていらっしゃるんだと思うんですけれども、一つ申し上げられるのは、このオリンピックに限っては、金メダルは誰に行くかはわからないということです。
特に男子の競技に関しては、非常に優秀なスケーターが揃っています。ですから、もちろん信成だって、五輪で金メダルを取る可能性はあります。ただ、誰にとっても同様に難しいことであるとしか、私は今言えません。
ただ一つ言えるのは、フィギュアスケート全体が今回はすごくおもしろく、エキサイティングな競技になると思うということです。

 

Q 本の冒頭の部分で一人の人間としてリンク外のことにかかわっていくのが大事と書いてあるが、具体的には?

A 一般論として、どのスケーターにも当てはまる話だと思うんですけれども、スケーターをスケート以外で教育することの重要性があります。例えば音楽を聞かせても、これが『カルメン』で、どういう作曲家で、どういう内容で、どういう物語かをまったくわからないようでは、それを滑るなんていうことはできません。ですから、いかにそれを理解するかが大切で、それを理解するためにも教育が大切になってきて、人間として成長しなくてはダメなんですね。
ほかにも、スタイル。いいスタイルって何なんだろう。いいコスチュームって何だろう。なぜこういうコスチュームを着るのか。そして、なぜこういう感情にあの音楽が当てはまっていて、どういう物語を自分が表現しようとしているのか。そういったところを理解できて、初めて滑れると思います。
皆さんも自分にお子さんがいたら、やはりいろんなことを体験させて、そこから学び取らせて、人間として豊かに育てたいと思われますね。それとまったく同じことだと思います。
非常にいい質問をいただいたと思いますが、日本でもアメリカでも同様で、非常に才能の豊かな選手はたくさん、いろいろな年齢層にいると思います。今、予備軍として十一歳、十二歳ぐらいから、十四歳の優秀な選手もたくさんいると思いますが、スケーターの人生は非常に短いものなんですね。そこに大きな危険性をはらんでいるということも警鐘を鳴らしたいと思います。
スケーターの生活というのは、朝、練習、夜、練習、あいだに大会で、ショーをやって、大会でせっかく各国に行ったとしても、ホテルとバスとロッカールームしか見られません。その国に触れるなんていうことはない。スケートの世界以外に触れることがまったくないのです。そういった選手たちがお金を稼ぐようになったときに、本物の良いものを見せようと思っても、もう遅いんですね。
例えば、いいバレエが来ているから観劇しようとか、そういうことをかれらに勧めたとしても、バーに行って一杯引っ掛けて、翌日、練習にちょっと酔っ払ったまま行って、怪我をして、選手生命がおしまいなんていう悲劇もたくさん目にしてきています。そうではなくて、やっぱり本物に触れて、それを見る目というものを養ってほしいと思います。
五輪でも世界選手権でも上位七人の男子に注目して見てください。みんな、キレイなヘアスタイルとメイクをしています。十六、十七歳の多感な年ごろの男の子にメイクさせるということがいかに難しいか、皆さん、ご理解いただけるでしょうか。
なぜそこまでしないと勝てないか理解させるためには、演劇を見せて、「ほら、あの劇で、あの役者たち、みんな、メイクしていたね。衣装、着ていたね。あそこまでのことをやるためには、ここまでやらないといけない」という説得の材料になるわけですね。納得させるために、そこまでやる必要があるのです。

 

Q アメリカでコーチをやめたくなるほどつらかったとは、どんなことがあったからか

A コーチをやめたいというのは、本当に何度かありまして、今もオリンピックが終わったら、やめたいなと思うときもあります、正直。
なぜコーチをやめたくなるのか。やっぱりこれはすごく難しい仕事だからだと言えるかもしれません。優秀な選手を持てば持つほど、やっぱりたくさんのものを自分でも抱えなくてはいけないんですね。それは情報という意味なんですけれども、スケート以外でもたくさんのことを自分が持っていなくてはならない
。それが大変なんです。
そういった情報を自分の中で処理して、スケートではこういうことをやらせて、ああいうことをして、この選手にはこういうことが向いているから、ああいうことがあるなどと、いろいろ考える。そして、そのスケーターの周りにいる人たち、さらにはジャーナリストにはどう答えるのかだとか、いろいろなところにアンテナを立てて、気を張っていなくてはならないという面があると思います。
そして、そういうことを全部こなしたうえで、初めて選手の優秀な才能に見合った、良い成果がついてくると思うんです。ただ大会で良い成績を出すということではないんですね。そこがコーチっていう職業を非常に難しくしているところだと思います。
これはコーチだけではなく、選手だけでもなく、皆さんの世界でも、どの世界でも当てはまることだと思いますけれども、つねに最新の情報を持って、すべてのことを把握していないと、やっていけないという、そういった意味での緊張感があります。ちょっとでも気を抜くと、すぐにほかの人に自分の立場を取られてしまう。そして、すぐ替わられてしまうということですね。それを一回失ってしまうと、もう二度と手にすることができない。そういった緊張感の中で仕事をしなくてはならないということなのかもしれません。
コーチは氷の上でのみ教えるという人もいるかもしれませんけれど、私の場合、例えばコスチュームの担当のスタッフがほかにいたり、ドクターがいたり、そうした日本人選手以外の人も私は見ています。特に日本人の選手の場合には、日本にいろいろと周りのことをやってきた方がいらっしゃる中で、一〇〇%、私が思う方向に向けるのは難しいですね。安藤選手の場合には一年半経って、今はもう彼女自ら納得して、コスチュームだったら、あそこに行って、こういうのを自分が要望するんだとか、そういうやるべきことをわかっているんですけれども、とにかくその氷以外でやるべきことがいかにたくさんあるか、ちょっと想像していただければと思います。

 

Q この選手を教えたいなというスケーターがいるか

A ちょっと日本人選手にいろいろ教えるのに疲れきっているというのが正直あります。やっぱり日本語を話せないことが一番のネックなのかもしれません。率直に言うと、日本の選手を理解するのはとても難しい。ミスコミュニケーションが過去、多々あったという点も否めません。もちろん私は日本が好きですし、和食も大好きですし、日本の皆さんのいいところも本当にたくさん触れています。ただ、やっぱり過去、スケート連盟の中のごく限られた人とですが、ちょっとミスコミュニケーションもありまして。自分はあまり気にせずに、自分は自分の仕事に集中してきたつもりでいますけれども。
ただ、若手の選手の中で、以前ほど、簡単に世界一を獲れるような選手が出てくるかどうか、私はあまり期待できないのかなとも感じています。今までは織田選手、高橋選手、小塚選手、浅田選手、安藤選手というように、ジュニアでワールドヂャンピオンになった錚々たるメンバーが次から次へと控えていました。もちろん、今後、ジュニアのワールドチャンピオンになれそうな可能性のある選手はいるかもしれませんけれども
層の厚さという面では、一時期よりはちょっと薄くなってきているかなという印象は受けています。
誤解のないように申し上げておきますけれども、織田選手はオリンピックが終わってもスケートやめるつもりはまったくありませんし、安藤選手もソチのオリンピックに行きたいと言っていますから、あと四年間はまだ、あの二人で手一杯になるという状況です。まだまだ若い選手ですからね、二人とも。

こんにちは。講談社BIZのからまるです。

1月15日、講談社に特設会場を設置して行ったニコライ・モロゾフさんの『キス・アンド・クライ』出版発表記者会見には、なんと35媒体ものマスコミの方にお集まりいただきました。皆さん、本当にどうもありがとうございます<(_ _)>

これはもちろん、からまるにとっては空前絶後の規模となりました。オリンピック直前の異常な時期とはいえ、フィギュアスケートに対する関心の高さを改めて思い知った気がします。

 この時期に選手を置いて本のPRのためにわざわざ来日したことに、批判の声もあることと思います。しかし、会見の冒頭でモロゾフさんが話した次の言葉が、この来日を決めた背景にあります。

 

モロゾフ会見.jpgのサムネール画像――日本選手を指導して4年になりますが、今まで自分の言葉で自分の思いを発信できることが思うようにできませんでした。私は日本語ができないので、日本の皆さんと分かり合うという意味で日本語での本ができたのがよかったと思います。

 

会見の中でしばしば、モロゾフさんは言葉の壁に苦しむ悩みを吐露していました。選手とすらそうなのですから、ましてやマスコミになかなか真意が伝わらなかったことには相当焦燥感があったようです。会見前日の14日に成田空港に迎えに行き、ホテルにチェックインしたあとスーパー英語使いで翻訳者の大野和基さんと3人で、ご本人が大好きなお寿司を食べたのですが、どのような態度でどのように話したら言いたいことが伝わるのか、けっこう悩んでいました。からまるなりにアドバイスらしきことはしたつもりです。

ところで、今回の来日は本当に弾丸ツアーで、14日の夕方に東京に着き、15日は会見とほかに個別のマスコミのインタビュー、そして外国人記者会のパーティーと予定が目一杯あり、翌日朝にはアメリカに帰りました。14日の夜、モロゾフさんを寿司屋にご案内し、注文どうしますかと訊くと、まるで子供のように顔を輝かせて、「まぐろ、ウニ......でも貝類は嫌い」と言っていたのが、なんだかかわいらしかったですね。

会見の内容について、すでに報道されているのはほんの一部であったり、その一部をさらにバイアスをかけて書かれたり、ずいぶんちがうなーと思うところがたくさんありますので、会見の内容を書き起こしたものを後日、発表いたします。やっぱり本そのものを読んでいただかないことには伝わらないな、というのが正直な気持ちです。本は2月2日発売予定で、すでにアマゾンなどネット書店さんで予約販売が始まっています。

表紙は写真の通り。フィギュアスケートの美しさと奥深さが表現できたのではないかと思っています。

こんにちは。講談社BIZのからまるです。

そんなわけで、大阪なみはやドームに程近い大日駅のホテルのレストランで、からまるたち制作スタッフは、ニコライ・モロゾフさんと打ち合わせに臨んだのでした。

打ち合わせのポイントの一つは、タイトルを『キス・アンド・クライ』にすることを承諾してもらうこと。じつは仮タイトルはもっと違って、この本の主要テーマであるコーチングを全面に出したものだったのですが、原稿を整理していく過程で、からまるは、この本はフィギュアスケート選手の成長の物語であり、その成長を通して見る人生の素晴らしさを謳った本だと思ったのです。

「キス・アンド・クライ」はご存じのとおり、フィギュアスケートの演技が終わったあと、選手がコーチといっしょに並んで座ってスコアが出るのを待つエリアです。いい得点が出たときの喜びが爆発する様子、あるいは逆に悔しさを表す様子などからこの名前が付いたと言われます。2007年3月に東京で行われた世界選手権では、優勝した安藤美姫選手と銀メダルの高橋大輔選手がこのキス・アンド・クライで泣きに泣きましたね。まさに人生の喜び哀しみが凝縮した場面です。からまるは以前から素敵な言葉だなと思っていて、いつか使おうと狙っていたのです。モロゾフさんも同じ考えで、すぐにOKしてもらいました。

もう一つは、パブリシティに協力していただくこと。そのためにからまるが提案したのが、共同記者会見でした。オリンピック直前のタイトなスケジュールの時期に、わざわざそのために日本に来てもらえるのだろうかとダメ元の提案だったのですが、かなり無理な日程を何とか調整して可能となりました。

その結果、1月15日に弊社で共同記者会見を行うことになりました。この日記をご覧のメディア関係者の方でご取材希望される方は、コメントでフィードバックをよろしくお願いいたします。

さて、明日と明後日は、この共同記者会見とその準備のため、日記を休みます。会見のくわしい様子は、来週18日に!

こんにちは。講談社BIZのからまるです。

さて、前回の続きです。

奇跡の電話から待つこと数時間、そのフィギュアスケートジャーナリストの方と連絡を取ることができました。からまるが電話で窮状を訴えたところ、なんと頼りない編集者だろうか、そんな編集者にニコライ・モロゾフさんの本を任せておいたらフィギュアスケート界の恥さらしだ、と思われたにちがいありません。しかも元新聞記者だけあって、展開の早い話についてきていただくことができ、翌日には打ち合わせにお付き合いいただきました。

この方はなんと社会人フィギュアスケーターとしても活躍されているんです。直近の世界大会では6位に入られたとか。この社会人フィギュアスケートの世界はかなり抱腹絶倒の面白さなんですが、それはまた別の機会にご紹介するとして、ともあれあの一本の電話がきっかけで最強の助っ人を獲得することができました。

おかげで熱狂的なフィギュアのファンの方でも納得して楽しんでいただける水準の原稿になったと思っています。からまるには、いまやその人は天使にしか見えません。

それにしても、フィギュア界のお話は聞けば聞くほど面白いですね。個性的な選手たち、ジャッジの謎......とくに複雑に入り組んだ人間関係にはアタマがおかしくなりそうです。日本代表選手たちは、テレビや会見ではみんな揃ってニコニコしているところをテレビで見ますが、やっぱりお互いに強烈なライバルなんですね。

今回のニコライ・モロゾフさんの『キス・アンド・クライ』に、実力が伯仲する国内選手権は、国の代表として出場する国際大会よりもむずかしい場合がある、というところが出てきて、どういうことなんだろうと思っていたのですが、文字通りの実力の問題にプラスして、このライバル関係の強烈さが原因なのではないでしょうか。

モロゾフさんがコーチと振り付けを担当したアレクセイ・ヤグディンと、そのライバル、エフゲニー・プルシェンコの火花散る関係は有名だったわけですが、この本でモロゾフさんは、ヤグディンは金メダルを獲ることよりもプルシェンコよりも上の順位になることに強烈なモチベーションがあったそうです。上ならば5位でも6位でも構わないと思っていたところがあったとか。それは多分お互い様で、プルシェンコは2002年のソルトレイクシティオリンピックでヤグディンに次ぐ銀メダルだったのですが、そのメダルを記者の前で一回しか見せずにしまいこんだのは、銀メダルだったからではなく、ヤグディンの下位に甘んじたからだったのでしょう。

でも、こういうライバル関係があるからこそ、同世代にすぐれた選手が集中するのかもしれません。サッカーの黄金世代だってそうでしたね。

人間関係の複雑さは、もちろん選手同士にとどまりません。選手周囲のいろいろな立場の方々のあいだにも存在します。とてもここでは書けませんが、本当に驚くような話ばかりですね。

それもこれも、ニコライ・モロゾフという人物が、

 

日本のフィギュア界にとって、革命児であると同時に問題児でもある

 

からでしょう。モロゾフさんの日本的なスケート文化に対する度重なる批判的言動はいろいろと洩れ聞こえてくるとおりで、筋が通っていると思う反面、気を悪くする人もいるだろうな、と思わせます。『キス・アンド・クライ』にももちろんそれは載せていまして、建設的な議論が起こることを期待しています。

こうして急ピッチで編集作業が進む中、12月25日から大阪なみはやドームで全日本選手権が行われました。その結果、モロゾフさんの現在の教え子である安藤美姫選手、織田信成選手、一昨シーズンまで黄金の師弟コンビであった高橋大輔選手は順当にオリンピック出場が正式決定しました。その代表選出会見があった日、12月28日に、からまるはモロゾフさんと最終打ち合わせをするため、大阪に出張したのでした。

つづくヽ(^。^)丿

こんにちは。講談社BIZのからまるです。

さてさて、そんな次第でニコライ・モロゾフさんの本造りが2007年の秋から本格スタートしました。モロゾフさんから時間をもらい何度もロングインタビューをしました。場所は安藤美姫さんや高橋大輔さんの練習場所がある中京大学や関西大学の近くだったこともありますし、本拠地の米国・ニュージャーシー州ハッケンサックだったこともありました。

でも、こうしたインタビュー取材については、スーパー英語使いの大野和基さんと編集担当の部員がすばらしい仕事をしたので、からまるはまったく出る幕がありませんでした。なので、時間は一気に2009年の冬に飛びます。

すでに翻訳も終わり、日本語をブラッシュアップしたり構成を変えたりしていたのですが、どうも気になることがありました。フィギュアスケートは超人気競技です。そのフィギュアスケートの本当のファンの方々にとって、この本は面白いものになっているのだろうか。その相場観がからまるにはないことが不安になってきたのです。

また、用語や言い回しについてもそうで、本当にフィギュアスケートの凄さ面白さ楽しさを表現し切っているんだろうか? このまま出していいのだろうか? 出版時期はどんどん迫ってくるのに、こんなことで大丈夫だろうか?

ちょうどそんな不安のあまり編集部の机に突っ伏して悩みに悩んでいた11月の下旬のまさにその日の夜、からまるに電話がありました。とてもなつかしい人で、ぼかして言わざるを得ませんが経済関係の専門家です。たぶん1年ぶりくらいの電話だったのではないでしょうか。

ひとしきり近況をうかがったあと、その方がからまるに人を紹介したいとおっしゃいます。とてもチャーミングな女性で、3人で食事でもしたいなーとおっしゃるので、なんだそういうこと(どういうこと?)かと思ったのですが、その女性は伊藤みどりといっしょに仕事をしたジャーナリストだと言うではないですか。

 

 

! !

 

 

 

ちょっと待て!

 

 

「いまなんて言いました?」

 

「だから、伊藤みどりっているじゃない。オリンピックの銀メダリストの」

「そ、そんなことは知ってますよ。それで、伊藤みどりさんと仕事をしたってことは、フィギュアスケートめちゃくちゃくわしい人ですか?」

「そりゃあ、そうでしょ。だって、フリーランスでフィギュアスケートの記事を書いていて、JOC(日本オリンピック協会)の広報部のライターの仕事もしているんだよ」

あわわわわわ だって、じゃないですよ。いやもう、その人すぐに紹介してもらえませんか? そんな食事なんてどうでもいいでしょ。今夜すぐにでも連絡取らせてくださいよ!」

「え? なんで?」

「いまフィギュアスケートの本やってるんですよ! それでいろいろ困って困って。ぜひよろしくお願いします」

「あれ、そうなの! わ、わかった」

そうなのです、その方はからまるがカミングアウトしていないためフィギュアスケートが好きなことをまったく知りませんし、ましてやナイショ3兄弟企画なのですから、モロゾフさんの本が進行していることなど知るよしもありません。

 

奇跡としか言いようがない偶然。

 

じつは、この電話が決定的な転機になったのです!

 

まだつづくヽ(^。^)丿ヽ(^。^)丿

こんにちは。講談社BIZのからまるです。

さて、フィギュアスケートが好きなんです!なんて言ったものの、そのなれそめはわりと最近のこと。2002年ソルトレイクシティオリンピックのロシア代表のライバル、アレクセイ・ヤグディンとエフゲニー・プルシェンコの頂上対決に目を奪われてからです。とくに金メダルを獲ったヤグディンのステップは衝撃的でした。目が覚めるようでしたね。あまりのことに、からまるはオリンピック後に長野で行われたアイスショーにわざわざヤグディンステップを見に行ったくらいです。

そして2004年あたりから安藤美姫選手や浅田真央選手など日本から素晴らしい選手がぞくぞくと登場してきてからは、俄然目が離せなくなりました。

何と言っても衝撃的だったのは、2005-06年のトリノオリンピックシーズンでの高橋大輔選手ですね。日本人男子シングルスケーターで、こんなに感情表現が豊かにできる選手が登場したとは!

そして日本中が瞠目したトリノオリンピックでまさかの荒川静香選手の金メダル。からまるは早朝まで女子フリースケーティングをライブで見ていましたので、その感動は今でも生々しく覚えています。

あのとき、最終滑走者のスコアがアナウンスされ、荒川さんの逆転優勝が決まった瞬間、荒川さんに激しく抱きつく濃ーい雰囲気のコーチがいました。いったいこの人誰なんだろうと思って、あとから調べたところ、なんと今書いたヤグディンと高橋選手のコーチでもあるというではありませんか。きっとフィギュアスケートの革命児なんだろうと思ったのでした。

そして翌シーズン。その人ニコライ・モロゾフさんがトリノオリンピックでボロボロの15位惨敗に終わった安藤美姫さんのコーチとなって、2007年3月の東京での世界選手権で彼女を優勝させてしまいました。このときからまるは決めました。この人の本をつくろう。もう絶対そうしよう、と。

英語ダメダメのからまるはスーパー英語使いの大野和基さんに手助けを求め、昨日書いたようにさいたまでニコライ・モロゾフ本人に会うことができ、現実に本づくりが始まったのでした。

つづくヽ(^。^)丿ヽ(^。^)丿

こんにちは。講談社BIZのからまるです。

フィギュアスケートの名コーチ。バンクーバーオリンピック日本代表6人のうち、安藤美姫さんと織田信成さんの現コーチであり、高橋大輔さんの元コーチ。自分が指導している選手の演技をリンクサイトで鬼の形相で凝視するイケメン外国人。

こう言えば、テレビでフィギュアスケートをご覧になっている人なら誰でもピンと来るのではないでしょうか。その人物、ニコライ・モロゾフさんの本を来月2日に刊行します!

じつは、この本の制作にはものすごい時間と労力がかかっているんです。からまるが最初にモロゾフさんに会ったのは、2007年の夏のこと。さいたまアイスアリーナで行われたシーズン前のアイスショーで来日していたときで、宿泊先のホテルのレストランでした。それからいろいろありまして、2008年のナイショ3兄弟の次男として出すつもりだったのですが、ここまで延び延びになったのです。

でも、オリンピック開幕直前の今のほうが、タイミングはよくなったかもしれません。だって、普通、フィギュアスケートのコーチの名前なんて誰も知りません。世界最高のコーチといわれるタチアナ・タラソワだって、浅田真央ちゃんのコーチに就任したから名前が知られるようになったくらいです。

しかし今、モロゾフの名前を出して、からまるの周辺で知らない人が一人もいないのです。いや本当です。

からまるは内心、男のくせにフィギュアスケートが好きなんて言うのはちょっと小っ恥ずかしいなと思っていたので、あんまりそういう話をすることがなかったのですが、今回の本をきっかけに社内外で話題にすると、皆さん本当によく見ていらっしゃる、知っていらっしゃる。そしてフィギュアスケートについて、選手について熱く語ってくださいます。いかつい顔したオヤジたちが「ミキちゃん」「マオちゃん」とうれしそうに語り出すのですから、からまるはもうカミングアウトすることにしました。

 

フィギュアスケートが好きなんです!

 

つづくヽ(^。^)丿ヽ(^。^)丿

新年あけましておめでとうございます。講談社BIZのからまるです。

12月25日を最後にぷっつり日記を更新していなかったからといって、からまるは遊び呆けていたわけではありませんよ米津社長(ー'`ー;)

12月28日は大阪に出張して、みっちり打ち合わせをしてまいりました。29日は出社して仕事。30日31日はさすがに会社には来ませんでしたが、自宅でだらだらと仕事。年明けのカウントダウンは机でゲラをチェックしておりました(ー'`ー;)

元旦と2日はのんびりしていましたが、3日は自宅仕事、昨日が仕事始めでした(会社は今日からです)が、なんと早速午前4時まで徹夜してしまいました。仕事始めが徹夜になったのは、はじめてかもしれません。今年は波乱含みとなる予感がいたします。

 

さて。

 

昨年、「実物を買う前に解説書を買うなんてダサすぎ」と左手を腰に当てて先輩を威嚇する口悪後輩に罵られたiPhoneを、とうとう12月30日に購入いたしました! おそらく1年くらい周回遅れの感想だとは思いますが、これは今までのモバイルツールにくらべて圧倒的にユビキタスを実感させますね。楽しいです。触り出すと止まらなくなりますね。

まだまだ機能の1万分の1も使っていませんが、まるで「どこでもドア」です。ぜひ仕事に生かしたいのですが、とりあえずは今月のマイ応援歌に選んだ木村カエラの「Butterfly」を入れて可愛がっています。

それにしても、どーしてからまるはこんなに仕事ばかりしているのか。それは明日から追々書いていきますね!

それでは、今年もどうぞよろしくお願いいたします<(_ _)>

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