こんにちは。講談社BIZのからまるです。
昨日のお話の続き。小川仁志さんは徳山高専勤務ですので、徳山市が合併した周南市に住んでおられます。本州の西端ですから、フェイストゥフェイスの打ち合わせがなかなかできません。からまるのほうから徳山に行ければ旅気分でいいのですが、むろんそんな出張費は出ません。しかし幸いなことに小川さんが東京で用事が多く、かなりの頻度で東京に来るので、それに便乗して会うことにしていました。
たいていは土日で、東京駅に近い丸の内ホテルの最上階にある美しいカフェで打ち合わせを重ねました。小川さんはじつはかなり二枚目なので、こういう場所が妙に絵になってしまうのです。ずいぶん何度も議論しましたねー。
こうした議論が実った『ヘーゲルを総理大臣に!』はかなりユニークな構成になりました。何せ冒頭から、ヘーゲルが総理就任演説をしているのです! 始まりはこんな感じ。
「静粛に! 静粛に! 日本国民の皆さん、私がヘーゲルです。ひょんなことから日本の総理大臣になってしまいました。なぜ200年も前の近代ドイツの哲学者が総理大臣なのかと思われるのも当然でしょう。しかしそれは皆さん自身が望んだことなのです」。
「皆さん自身が望んだこと」。なぜ今、日本の総理大臣がヘーゲルでなければならないのか。その理由が著者と若い人たちの会話の中から探り出されていきます。一足早く目次をご紹介しましょう!
プロローグ ヘーゲルの総理就任演説
第Ⅰ部 みんなのつぶやき――対話編
第1章 貧乏人は救うべきか?
負け組って何?――タケシのつぶやき
格差社会って何が問題なの?――カオリのつぶやき
勝ち負けの基準――タケシ君への応答
負けてもやり直せる社会――カオリさんへの応答
第2章 なぜ働くのか?
働くってどういうこと?――ユウジのつぶやき
一人前ってどういう状態になることをいうの?――マモルのつぶやき
仕事がない苦痛――ユウジ君への応答
人から認められることが大事――マモル君への応答
第3章 欲求を満たすことがいいことなのか?
お金を稼ぐってどういうこと?――ユキのつぶやき
世の中が良くなるってどういうこと?――リョウのつぶやき
人は平等を求め、しかも貧困を嫌う――ユキさんへの応答
富や幸福の分かち合い――リョウ君への応答
第4章 個人はちっぽけか?
権利って何?――サヤカのつぶやき
人から認められるってどういうこと?――リナのつぶやき
国が権利を保障する――サヤカさんへの応答
他者を自分と同じように扱う――リナさんへの応答
第5章 まともな人間でないとダメなのか?
まともってどういうこと?――カズヒロのつぶやき
常識って誰が決めてるの?――ベッキーのつぶやき
人の守り従う道、人の間柄で守り従う道――カズヒロ君への応答
共同体の共通感覚――ベッキーさんへの応答
第6章 家族に意味なんてあるのか?
家族愛なんてあるの?――ツトムのつぶやき
理想の教育って?――ユミのつぶやき
法律上の家族より目に見える愛の形――ツトム君への応答
子どもを独り立ちさせること――ユミさんへの応答
第7章 地域のおつき合いは必要なのか?
地域のおつき合いってどういうこと?――マキのつぶやき
公共性って何?――トオルのつぶやき
助け合うということ――マキさんへの応答
自分をとるかみんなをとるか、ではなく――トオル君への応答
第8章 国家なんているのか?
愛国心なんてもってるの?――ケンタロウのつぶやき
警察国家ってどういうこと?――ルイのつぶやき
愛国心はプロパガンダか、国民の本心か――ケンタロウ君への応答
自由を奪うか、保障するか――ルイさんへの応答
第9章 政治にかかわる必要があるのか?
民主主義って何?――シズカのつぶやき
国なんてつくれるの?――ナツオのつぶやき
多数決より話し合いが大事――シズカさんへの応答
革命より改善が大事――ナツオ君への応答
第10章 僕らは本当に自由なのか?
自由って何?――ヒロキのつぶやき
生きるって何?――ノゾミのつぶやき
自由は支え合い――ヒロキ君への応答
生かされているから助け合う――ノゾミさんへの応答
第Ⅱ部 もしヘーゲルが総理大臣だったら――講義編
第11章 認め合うこと
1 みんな支え合っている
2 働くのは誇らしいこと
3 欲求を抑えることはできない
4 認め合うことが大事
第12章 つながること
1 社会にも心がある
2 愛を育む場所がいる
3 人は誠実さでつながる
4 みんなのために身を捧げる
第13章 生きること
1 社会をつくろう
2 自由がすべて
エピローグ ヘーゲルを総理大臣に!
どうでしょう。ちょっと雰囲気をわかっていただけたのではないでしょうか。からまるは原稿を通読して、これは哲学書だけれど、理論の哲学書ではなく、心の哲学書だな、と思いました。本当の答えを求めて胸が引き裂かれるような気持ち。そういう心がみなぎる本だと思ったのです。
クサく言うと、「泣ける哲学書」。そんな本、こういう分野にはないじゃないですか。
そう考えたからまるは、今までやってきた本とはまったく違う装幀のイメージが湧きました。それは本当に偶然の出会いからだったのです――。