「アメリカの砂漠に京都を作ろう」と山中伸弥さんが講演で。

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こんにちは。講談社BIZのからまるです。

昨日は休暇を取って京都に行きました。稲盛財団が主宰している京都賞の第26回先端技術部門を受賞したiPS細胞の山中伸弥京都大学教授の講演を聴くためです。

からまるは京都賞というものの存在こそ知っていましたが受賞講演会に行くのは初めてで、今回はノーベル賞候補に挙がった山中教授が講演するということで2000人近い人数を収容するために異例の2会場(1会場はモニターで聴講する)態勢という、まるで大企業の株主総会のようなものものしい雰囲気になっていました。からまるは早めに申し込んだので、メイン会場のけっこう前のほうで聴くことができましたが。。

山中さんはこれまで何度も講演されているそうで、講演内容はたぶんお馴染みのものだと思います。整形外科としてはじめて執刀した、ベテランならものの10分で終わるような簡単な手術で2時間もかかって看護士全員に呆れられ、その患者さんが学生時代の親友だったので寛大に見てくれたもののこれで医師の道を諦め研究者になったこと、ポスドク(博士号を取得した後の研究生)として受け入れてくれたアメリカのグラッドストーン研究所のロバート・マーレー博士に教えられた研究者の心得が「ヴィジョン&ハードワーク」で、これを京大iPS細胞研究所の学生たちにも説いていること、帰国後にアメリカの恵まれた研究環境と違いすぎる日本の状況にPAD(Post America Depression)にかかり、研究をしているのか実験用ネズミの世話係なのかわからないことから同僚に「山チュウ」と呼ばれたこと......。笑いを取りながら面白い話が続きます。

からまるは最初、偉大な研究者というイメージで見ていたものでしたから、こんなに人なつっこい話をされることに(関西人のDNAなのでしょうか)かなり面食らってしまいました。

このあと本題の「iPS細胞がつくる新しい医学」というテーマに入っていくのですが、今回の講演でのiPS細胞の説明方法は、まだあまりおっしゃっていないネタだそうで、それが見出しに書いた「アメリカの砂漠に京都を作ろう」という話なのです。

iPS細胞研究は、将来的には人体の組織や臓器を再生するために進められています。で、そもそも受精した瞬間はたった一つの細胞(胚=Embryo)だったものが、どうやってさまざまな複雑な生命器官に分裂・生成していくのか。一つの考え方は、

 

必要な遺伝子のページだけコピーしている。

 

もう一つは、

 

すべての遺伝子のページをコピーして必要なところだけ使っている。

 

この二つの考え方で生物学界は長年対立してきたそうです。

では、まったく同じ生命を再生するとします。クローン羊のドリーのような例ですね。それを山中さんは出版社にはうれしい喩えで説明してくれました。

 

アメリカの砂漠にもう一つ京都を作るにはどうすれば効率的か?

 

最初の胚(細胞)を「京都の写真集」とみなし、さまざまな器官をその写真集に掲載されている「金閣寺」「祇園の芸子さん」「賀茂川」などとみなすと、最初の考え方は、

 

必要なページだけコピーしてアメリカに持っていってつくる。

 

二番目の考え方は、

 

全ページをコピーして持っていき、必要な箇所に必要なページを使ってつくる。

 

二番目の場合は、本にあらかじめしおり(ブックマーク)を付けておいて、該当する場所(たとえば金閣寺を建てる場所)に使うということになります。このしおりを転写因子と呼ぶのだそうです。

もちろん山中さんの考え方はこちらですね。一つの細胞には全遺伝子がコピーされていると考えたから、たとえ単純な皮膚細胞からでも適正な刺激が与えられれば心臓のような複雑な臓器が再現しうるという「ヴィジョン」を描けたのだと思います。

それに、まったくのシロウト意見ですが、一番目のほうが一見効率的に見えるけれども、持っていく途中でもし壊れてしまったら、また京都に戻って写真集をコピーし直さないていけないところが欠点のように思えます。

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このページは、karamaruが2010年11月12日 17:51に書いたブログ記事です。

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