こんにちは、からまるです。
とんでもなくスゴい新人が現れました! トップ3に入る総合商社に務める37歳の現役社員が書いたビジネス小説です。
じつは――。
かれこれ1年近く前のことです。本作の元になる分厚い原稿が、からまる宛にいきなり届いたのです。からまるが経済小説の編集を手がけていることが検索で引っかかったのかもしれませんが、指名で送られてきた、いわゆる持ち込み原稿というものです。
しかもその分量たるや、400字換算でたっぷり1000枚分もあったのです。おいおい、非常識極まりないよ! そんなの読んでいるヒマはありませんと、傲慢なからまるは多忙にまぎれて1ヵ月ほど机上に放置していました。
ところが、たままた手すきになったときに読み始めるや否や、すっかり打ちのめされてしまいました。原稿の持つ、触れたら痛いほどの熱量というか、これを伝えたいという強烈な意思が、小説の登場人物たちが戦わせる言葉の量と激しさとなって圧倒するのです。小説や経済書といったジャンルを超えて、からまるは、こういうものを読んだことがありませんでした。
ともあれ、まず著者に会わなくては。ほったらかしてごめんなさいと連絡を取り、ある喫茶店でお会いしました。早速いちばん訊きたかった質問、どうして発表のあてもないのに、こんな大量の原稿を書いたのかを訊きました。その答えはこうでした。
「自分がしてきたビジネスは、うまくいった時もうまくいかなかった時もある。うまくいかなかった時、ではどうすればうまくいったか、一生懸命シミュレーションして物語にした」。
毎晩のように自分のビジネスを反省してストーリーの核を作り、それを解決し得る主人公を創造したというのです。
その後、何度も打ち合わせや原稿のやりとりを重ね、ようやくそれが『マントラを掲げよ――信念を戦略に変える力』というタイトルの本になりました。「マントラ」というオウム真理教でも使う宗教用語をタイトルにするなんて、ビジネス分野の本ではあり得ないかもしれません。社内では反対意見がありました。でも、この言葉でしか、物語の中で奮闘し、うめきながらも夢を追いかけるビジネスマンたちの心の奥を読者に伝えられない。からまるはそう考えました――。