マントラは「社是」や「経営理念」とは違う。編集者なら毎日、本を編集するときに胸に誓う主義・信念。

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こんにちは、からまるです。

会社の戦略が、それを掲げる組織の人たち全員の納得がいくものになっているかどうか。全員が心から納得できるものが、正木静修さんのビジネス小説『マントラを掲げよ 信念を戦略に変える力』が言う「マントラ」です。でも、そういう「マントラ」って何なのだろう。

大企業にいる方なら、咄嗟に「社是」「経営理念」を思い浮かべますね。講談社には創業者で初代社長・野間清治が決めた三大社是というのがあります。「渾然一体・誠実勤勉・縦横考慮」。それを解説した野間の言葉を引用しますと、

「「渾然一体」は、各個人を打って一丸となし、目的に向って邁進せしめるゆえんの主義であり、理想である」「「誠実勤勉」は、個人の人格の本質であり、「縦横考慮」は、その材器の能力である」。このように社員手帳の冒頭に書いてあります。

これには反論の余地がありません。でもはたして心を打つかというと、どうでしょうか。ちょっと抽象的だと思うんです。からまるはこうやって引用して初めて社是の解説を知ったほどの落第社員ですから、会社を代表してモノを言うことなどまったくできませんが、でも、からまるを含めて多くの社員が「渾然一体・誠実勤勉・縦横考慮」よりも「面白くて、為になる」という、野間が言う「大目標」のほうを、いつも企画を考えるときに気にするし、心に掲げやすいと感じていると思います。編集者にもよると思いますが、「面白くて、為になる」は、戦略というには平凡過ぎるけれど、心の納得感はじゅうぶんにあり、これはマントラとして通用するのかもしれません。

『マントラを掲げよ 信念を戦略に変える力』で主人公・黒見がクライアントとして相手にするのは、日本最大手の航空会社KAL(国際アジア航空インターナショナル)です。万年赤字続きで取引銀行に増資を引き受けてもらってなんとか延命している状態で、政府が経営再建に本腰を入れるよう経営陣にプレッシャーをかけています。黒見は個人的に親交のある国土交通大臣・小宮山雄一郎の依頼を受けて事に当たるのですが、血を流す改革を回避してきたKALはマントラを見失っていると、黒見は小宮山に指摘します。


「マントラ? そりゃあご立派なのがKALにはあるだろ。俺は国交大臣として嫌って程叩き込まれたぜ。いいか、

KALグループは、総合力ある航空輸送グループとして、お客さま、文化、そして心を結び、日本と世界の平和と繁栄に貢献します。

1.安全・品質を徹底して追求します。 
2.お客さまの視点から発想し、行動します。 
3.企業価値の最大化を図ります。 
4.企業市民の責務を果たします。 
5.努力と挑戦を大切にします。

だろ?」
「小宮山先生、それはKALのビジョン・経営理念ですね。マントラではありませんよ」
(第四章「意味を追求する」より)


「マントラではない」と答えたのは稲垣和幸という人物で、セラミックの技術から身を起こし一代で大企業グループを作り上げた伝説の経営者です。小宮山国交大臣の個人的アドバイザーを務め、後に再生の切り札として政府からCEOに任命されてKALに送り込まれることになります。


「稲垣さんのおっしゃる通りです。この経営理念からは、KALの従業員が心の底から情熱を持って示すべき、あるいは抱いているマントラがまったく見えてきません。(中略)KALという企業の根底にある大切な主義・主張が、日本と世界の平和と繁栄なんてことはありません。親方日の丸体質がKALの組織に染みついているから、そういう言葉が出るのです。僕が知りたいのは、航空会社の社員全員が毎日飛行機を飛ばすために胸に誓う、いや、誓わなければならない主義・信念です
(同上)


では、それはいったい何なのでしょうか。編集者なら、毎日企画を考え、取材を行い、原稿を読み、ときには書き、本を編集するときに胸に誓う主義・信念ということになるのですが――。

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このページは、karamaruが2012年3月 6日 18:11に書いたブログ記事です。

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