すぐれた戦略には、組織の誰もが掲げ、心を一つにできる信念がある。

|
こんにちは、からまるです。

昨日のエントリの続き、日本最大手の航空会社KALのマントラは何なのでしょう? ビジネス小説『マントラを掲げよ 信念を戦略に変える力』の主人公・黒見はこういう議論を展開します。


「(KALの)西岡社長が言われる機内サービスを改善するといった高品質サービスへの取り組みがマントラだとは思いません。地上職の人たち、客室乗務員たち、パイロット、ありとあらゆる職種の人たちがみんな心を一つにして機内サービスの改善を心に誓うことなどあり得ません。そもそも、機内サービスを改善して顧客をひきつけられる時代でしょうか? KALが掲げるべきマントラではありません」

「経営理念のように曖昧な言葉で、マントラを語る必要はないと思います。品質の改善、企業価値を高める、努力と挑戦、どれをとっても、この数十年の熾烈な航空業界の戦いの中で見出してきたKALが本質的に心に掲げる信念ではありません。そこに、KALという航空会社が存在する″意味″が欠けていることはあきらかです。組織として存在する意味が欠けているのですから、そこで死に物狂いで働く人々が取り組むべき″意味″について理解できるはずもありません。もし、私がKALのためにマントラを掲げるなら、答えは実にシンプルです。それは、

″FAST・FAR・PEACE″

 という三つのワードに尽きます。鉄道や車でドライブするよりも速く(FAST)、国内線がメインの競合他社と比してさらに遠く(FAR)へと行くことができ、ご搭乗いただく顧客に対して絶対というレベルで安心(PEACE)を運ぶことができる。KALが掲げるべき信念はこれしかない。パイロットから地上職のカウンターにいる職員まで、誰もが日々の運行業務の中で″これを胸に今日もがんばるぞ!″と誓える信念です
(第四章 意味を追求する)


からまるは原稿を読んで、この議論にノックアウトされましたね。「信念を戦略に変える力」というサブタイトルは、じつはこの議論を読んで考えついたのです。″FAST・FAR・PEACE″というマントラを掲げることによって、「鉄道や車でドライブするよりも速く(FAST)」するにはどうすればいいのか、「国内線がメインの競合他社と比してさらに遠く(FAR)へと行く」ようにするにはどうすればいいのか、「ご搭乗いただく顧客に対して絶対というレベルで安心(PEACE)を運ぶ」にはどうすればいいのかといったように、マントラはことごとく体的な事業戦略に展開することが可能になるからです。ントラ(信念)を戦略に変えるのが、マントラ自身が持つ偉大な力ではないか、と思ったのです。

では、肝心のKALは黒見の議論にどういう対応をしたのか。黒見はKAL本社に乗り込み、改革のキーマンとされる宇田川副社長、山上経営企画室副室長、川崎課長の三人と対座します。しかしキーマンであるはずの宇田川副社長は、黒見が指摘する実質債務超過という隠れた現実から目を背けようとします。業績は回復傾向だし、まだそう決めてかからなくてもいいのではないか、と。もし資金ショートを起こしたらどうなるかと問われても、「それで、どうなるって言うんですか」と開き直るのです。しかしそうして現状を追認し、景気回復や金融事情の改善など、自力でできない範囲の救済をあてにするようでは、将来に向けた問題解決になりません。

結局、宇田川副社長は、なんとミーティングの最中に「トイレに行く」と言って中座したまま、戻ってくることはありませんでした。文字通り現実から逃げたのです。

しかし、同席した若い川崎課長は、黒見の呼びかけに内心、反応します。ミーティングが終わって、一人、黒見を追いかけて副社長の態度を詫びる川崎に、黒見は重要なメッセージを授けます――。

このブログ記事について

このページは、karamaruが2012年3月 7日 18:08に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「マントラは「社是」や「経営理念」とは違う。編集者なら毎日、本を編集するときに胸に誓う主義・信念。」です。

次のブログ記事は「まず捨てなければならないものは恐怖である......しかし大企業病が立ちはだかる!」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

カテゴリ

月別 アーカイブ

ウェブページ

Powered by Movable Type 6.2.4