まず捨てなければならないものは恐怖である......しかし大企業病が立ちはだかる!

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こんにちは、からまるです。

昨日のエントリの続き、問題から目を背け、外部のコンサル風情に何がわかるとトイレを理由にミーティングから逃げたKALの宇田川副社長の態度を恥じらい、このミーティングを実現させた経営企画室の若い課長である川崎が物語の主人公・黒見に詫びます。それに対して黒見は、こういうアドバイスを授けます。正木静修『マントラを掲げよ 信念を戦略に変える力』のハイライトシーンの一つです。


「川崎さん、危機的な状況にある企業がまず捨てなければならないのは、何だと思いますか?」
川崎はこの質問に戸惑う様子だ。
「過去のしがらみとか、業界慣習とかでしょうか?」
「それも捨てなければならないものですが、会社が追い込まれれば、自然と捨てなくてはならなくなります。ですから最初に捨てなければならないものではありません」
僕は運河のふちの手すりに手をかけ、思いっきり息を吸い込み、吐く息に乗せて言う。
「恐怖です」
沈黙が僕と川崎の間で渦を巻く。
「企業の再生とは、僕の経験では、新しく事業を創り出す時以上に″クリエイティビティ″を必要とします。追い込まれた状況の中で、そこにいるメンバー全員が頭を使い、考え、そして不可能と思えることに果敢にチャレンジしなくてはなりません」
川崎は運河の一点をじっと見つめている。
「ですが、恐怖はそれを完全にシャットダウンします。大きな視点で物事を見る機会を奪い、自ら考えるという思考回路を停止させ、瞬時に行動に移すべき力を奪う。それが恐怖です」
僕は川崎のことを見ずに、続ける。
″これをやったら、上司は何と言うだろう?″″これを主張して失敗したら責任を取らされる......″。そういう具合に人を緊張させ、収縮させ、安定的で小さな保身に執着させる。でも、あなたには勇気がある。恐怖を捨てようと努力している」
僕は川崎を見る。川崎は澄んだ、冷静な目で僕を見ていた。
「川崎さんのような人がいることでKALは救われたと、僕は個人的に考えています。あなたは恐怖を克服できるはずです。そういう人は、必ず組織をリードするマントラを掲げることができます」
(第五章 違いを創り出す)


しかし、黒見は楽観的過ぎました。宇田川副社長は川崎に容赦ない報復を下します。川崎へ、課内全員にccを付けて、このようなメールを流すのです。


川崎課長
 小職としては、貴職のこの経営危機に対する姿勢に疑問を抱かざるを得ない。外部の専門家たる者に当社情報を渡して、組織に対する不信感を抱かせるようなアドバイザリーを受け、それを正として中期経営計画を立案することは、言語道断と思料する。貴職を本プロジェクトから外すこととする。以後掛かる事なき様、厳正なる対応を望む。 宇田川
(同上)


そして川崎はインドのムンバイ事務所への転勤を会社から命じられます。「情報を外部に渡すとは何事か!」と改革のための事業戦略とは関係ない筋違いのことで社員に制裁を加える、パワハラを超えて、いじめとしか言えない仕打ち。登場人物の無念がありありと伝わってくる、『マントラを掲げよ 信念を戦略に変える力』の中でも出色の部分なのですが、それだけに改革に立ちはだかる大企業病の罪深さもありありと感じさせます。

しかし、大企業の経営者だからといって、そんな病に冒された人ばかりではありません。大企業の経営者でも、自らを変え、会社を変えることができる人もいて、この物語にはそういう人物も登場します。大手通信キャリア会社の専務取締役である地影俊夫。黒見に導かれるようにして、一介のサラリーマン重役だった地影が勝負師に変貌していく、胸のすくような後半の盛り上がりを来週はご紹介します!

このブログ記事について

このページは、karamaruが2012年3月 8日 15:55に書いたブログ記事です。

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