共にシナジーをつくるべき相手となぜ憎しみ合うのか?

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こんにちは、からまるです。

昨日のエントリの続き、正木静修さんのビジネス小説『マントラを掲げよ 信念を戦略に変える力』後半の盛り上がり紹介です。

日本最大手の総合商社・三友商事にとってもPCOMは「メディアと小売りの融合」を掲げ手塩にかけて育ててきた事業でした。しかしもう一方の大株主であるフリーダム・グループから見ると、日本の典型的な大企業である三友商事は意思決定のスピードがあまりにも遅かった。共に事業を育てるべきパートナーであるはずだったフリーダムがメガキャリアであるBDDに対するPCOM株の売却を一方的に宣言したことによって筆頭株主の地位を奪われることになる三友商事幹部たちは、この仕打ちに烈火のごとく怒ります。BDDとのシナジーを考える以前に、BDDに対する怒りのあまり、社内の冷静な声さえ封じられそうになるのです。たとえば、こんな具合に。


「マジョリティーの立場を奪い返すのはたしかにご指摘の通りですが、BDDとのシナジーもレバレッジすべきです。むしろBDDを排除すべきではありません」
口を挟んだのはメディア・コンテンツ本部の課長である緒方という女性だった(中略)。
「BDDは285万件というブロードバンド顧客基盤を持っています。彼らの巨大なブロードバンド通信網と携帯電話を合わせた複合的なサービスは、今後のPCOMにおけるクアトロ・サービス(電話・インターネット・テレビ・携帯)強化、1契約当たりの月間平均収入の成長には欠かせません。JTTのようなメガキャリアと互角に戦いを挑む、次のPCOM成長へのジャンプスタートには欠かせないパートナー候補です」
「BDDがだと? 君はどこまでアホなんだ! 俺たちの寝首を掻いた奴らを将来に向けて欠かせないパートナーなどと呼ぶんじゃない!
(常務取締役の)楠木は怒りに任せて手元の資料を緒方に思い切り投げつける。会議室は一瞬凍りつくが、緒方は食い下がる。
「ですがそれが事実なのです! 現在、マーケットではメガ通信キャリアを交えた競争が熾烈を極めています。(中略)加入世帯の伸びは鈍化し、高速インターネット接続と電話に関してはマイナス基調です。ARPU(加入世帯当たり月次収入)の成長を語るうえでは、新しい仕掛けとサービスが不可欠なのです。今後は、光ファイバー通信回線を使った番組配信を手掛けるJTTグループとの正面切った競争が予想されます。そんな熾烈なマーケットで、PCOMは素手で戦えとおっしゃるのですか!
(第九章 モメンタム)


こういう会議で経営幹部を前に持論を述べる難しさは、サラリーマンなら誰もが経験するところではないでしょうか。そういう経験からすると、なかなか胸がすくシーンですよね。こうして会議の方向は、筆頭株主の地位を奪い返すためのTOB(株式の公開買付)を決めつつも、その後にBDDと共に達成すべきゴールを明確にすることに収斂していきます。

それに対して、黒見主導によるBDDへのPCOM株売却には、一つの大きな問題がありました。金融商品取引法に定められたTOBルールです。企業の3分の1以上の株式を取得する場合はTOBが必要だと定められているのです。フリーダムと黒見は、フリーダム・グループが持つPCOM株を直接売却したわけではなく、中間持ち株会社が保有していたPCOM株をBDDが取得した形にしているので問題ないという主張でしたが、グレーゾーンであることには違いはなく、金融庁の調査結果次第でもありました。ここを三友商事に突かれると、BDDは強欲なフリーダムに65%ものプレミアムを乗せられた価格で株を買って大金を払ったにもかかわらず、さらにTOBをかけて一般株主からも株を買わなくてはならなくなります。いくらキャッシュがあっても足りません。BDDの地影専務は深刻な状況に追いつめられます。

と同時に、それは主人公・黒見がBDDに対して行ってきたプロのアドバイザリーとしての能力に根本的な疑問を突きつけるものでもありました。黒見は手を汚してても起死回生の方法を考えつかなくてなりません――。

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このページは、karamaruが2012年3月14日 21:48に書いたブログ記事です。

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