他社ながらアッパレな本『スタンフォードの自分を変える教室』

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こんにちは、からまるです。

昨年10月に出た『スタンフォードの自分を変える教室』(ケリー・マクゴニガル著、神崎朗子訳、大和書房)が、いまや45万部を超える大ベストセラーになっているそうです。表紙イメージが似ているサンデル教授の『これからの「正義」の話をしよう』に追いつくかもしれない売れ行きで、じつにうらやましい限りです。

高い目標を掲げても、易きに流れ、欲望に負けてサボる意志の弱さを、あるときは脳科学的に、またあるときは心理学的に説明しています。昔からよくあるタイプの本といえばそれまでですが、アメリカ東海岸屈指の名門校の人気講義とくれば興味を引かれます。実例と説明がうまくマッチしていて、その快刀乱麻ぶりがまず読み物として面白いですよね。

人間の脳は「今よりも将来のほうがもっとできる」と楽観視するのだそうです。しかも、人間の持つ「報酬システム」はなかなか厄介で、目の前に刺激がなければ将来の報酬のことを考えられるのに、目先の報酬にはたちまち反応し、ドーパミンが発生してしまう。それが欲しくて欲しくて仕方なくなる。そして脳の前頭前皮質は「明日こそちゃんとやるから」という言い訳を正当化するのだそうです。

したがって、そんな立派な脳を持たないチンパンジーなら「いま2つのおやつを上げるけれど、2分待ったら6つのおやつを上げる」という「待て」をガマンできるのに、人間はそれをガマンできない。それが実験で確認されたのだそうです(p233-235)。「明日はちゃんとやるから、今はいいんだもん」。これでは意思の力なんて台無しです。

かといって、それによって自分はダメだと罪悪感を抱えるのが、もっともよくないと著者は書きます。

「自己コントロールの探求においては、私たちが自分に向かってふりかざすおきまりの武器――罪悪感、ストレス、恥の意識――は何の役にも立ちません。しっかりと自分をコントロールできる人は、自分と戦ったりはしません。自分のなかでせめぎ合うさまざまな自己の存在を受け入れ、うまく折り合いをつけているのです」(p337)

いいフレーズではありませんか。こういう著者の眼差しがベストセラーになっているもう一つの理由だと思います。ただし、実際に大学で行われる10週の講義は実践的なエクササイズを狙っているようですが、本書はそういう要素が弱いですね。

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このページは、karamaruが2013年2月12日 17:54に書いたブログ記事です。

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