こんにちは、からまるです。
先々週のロンドン出張、行きの飛行機では仕事の準備で各社のライツガイド読みにかかりっ切りになってしまったので、帰りの飛行機で読もうと楽しみにしていたのが、『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』(グレッグ・マキューン著、高橋璃子訳、2014年11月、かんき出版刊)でした。じつに面白かったですね。おかげで機内でまったく退屈しないで済みました。「ビジネス書大賞2015」の書店賞受賞本でもあります。
エッセンシャル思考の要諦は、23ページの図で示されています。いろいろなことにちょっとずつエネルギーを注ぐより、ひとつのことだけに注いだほうが、圧倒的な成果を出す。「エッセンシャル思考は、より多くのことをやりとげる技術ではない。正しいことをやりとげる技術だ」「努力の方向が絞られている。だから、とても遠くまで進むことができる」(p22)
このポイントを主題に、さまざまな切り口で、印象的なエピソードを連ねて、颯爽と書き切っています。書き手が若いからなのか、スピード感あふれる書きっぷりがいいですね。原文がいいのでしょうけれど、翻訳もいいのでしょう。取り上げられる事例も、ドラッカーのプロフェッショナル論や『ザ・ゴール』などビジネス書読者に刺さるものばかりです。タイトルから想像されるビジネススキル本というよりも、ビジネスセルフヘルプの本ですね。
第13章は「編集」について書かれているので、つい注目です。これは映画の編集に触れたものですが、「すぐれた編集技術は、重要なものがいやでも目に入ってくるようにするのだ」(p195)。本書の編集もよくできています。重要なキーフレーズを「いやでも目に入ってくるように」版面からはみ出させて入れたり(最近のビジネスセルフヘルプ本の流行でもあります)、黒地白抜き文字を随所に入れたり。キーフレーズを大きく入れるには、前後の文章をうまくページ内に収めるために刈り込んだり行数を増やしたりする細かい工夫が必要で、それをじつに緻密にやっている痕跡がうかがえます。
次の部分も印象的です。
「エッセンシャル思考を生きる人は、周囲の人と同化しない。人がイエスと言うとき、あなたはノーと言う。人が行動するとき、あなたは考える。人がしゃべるとき、あなたは耳を傾ける。人がスポットライトを浴びようと押し合うとき、あなたは陰に立ってしかるべき時期を待っている」(p288)
何だかとても日本人好みの姿勢。著者はシリコンバレーのコンサルティング会社CEOということですが、生き馬の目を抜く業界だからこそ、このような姿勢が尊ばれているのでしょうか。
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明日からゴールデンウィーク休暇に入りますので、しばらく日記はお休み。また5月7日に!