karamaru: 2015年7月アーカイブ
こんにちは、からまるです。
明日から来週末にかけて〆切ラッシュが続きます。なんといっても大変なことになりそうなのは、8月下旬に2つの緊急出版を予定していることです。しかもこの2つ、進行スケジュールが1日違いで重なっていて、入稿から下版(印刷所が実際に印刷する版を完成させる)まで2週間という強行スケジュールです。「え、そんな...」と、すでに校閲担当者の人たちからは悲しげな声が上がっていますし、販売担当者は「まあ、本当にできてから考えましょうか」と半信半疑です。からまるにとっても、そんな強行スケジュールで2冊同時に進めるなんて、未知の領域です。
そのうち1冊のテーマは国際経済です。この日記を読んでくださる方なら、どうしてからまるがギリシャ危機についてくどくど書いてきたのか、合点していただける企画です。
もう1冊はスポーツ関連です。これも、この日記を読んでくださる方なら、どうしてからまるが脈絡なくサッカーのことを書いているのか、合点していただける企画です。
それ以外にも、初の+α新書担当作となる企画を8月に、初の通常の翻訳書担当作となる企画を9月に出します。それらの校了作業が切れ目なく続きます。昨日までお伝えした通り、山本作兵衛さんの『画文集 炭鉱に生きる』の文庫化もあるので、それもカウントすると、8月と9月で5点刊行する計画です。
無謀です。きついです。しかし読者の方々が待っておられるはず。頑張り抜くしかありません。
このような事情で、明日から2週間、この日記をお休みし、7月31日に再開します。というわけで、その日まで!
こんにちは、からまるです。
9月20日に+α文庫で出す山本作兵衛さんの『画文集 炭鉱(ヤマ)に生きる 地の底の人生記録』にまつわるエントリの続き。作兵衛さんは、男だけでなく、女性の強さもたくさん描いています。
明治時代の炭鉱では女性も働きました。新婚夫婦は二人一組になって炭鉱に降りるケースが多く、その場合は、夫は石炭を掘り出す「先山」、妻は「スラ」と呼ばれる、竹を編むなどした、石炭を積み込む箱を引っ張る「後山」となったそうです。このように夫婦で「先山」「後山」を務めた場合、夫婦のどちらかが体調を崩すと仕事ができなくなってしまう危険もあったとか。
女性も身につけるのは腰巻き一丁で、上半身は裸で働いていました。仕事が終わった後の風呂は男女混浴。今では信じられない職場環境ですね。そうした画がたくさんあります。
同じ職場で夫婦共働きでも、家事は妻の役割だったようです。夫は風呂から上がって早々ふんどし一丁で一升瓶から「上がり酒」を呑んでいる傍ら、妻は洗濯や米とぎをしている画があります。かといって彼女たちは、ただのかよわい女性なのではなく、「ヤマの女は気性も激しく、言い込められた亭主は実力行使。だが、女も負けてはいなかった」と、ほうきを振り上げた夫に、お釜の蓋を盾にして対抗する妻が描かれた画もあるのです。
こんにちは、からまるです。
9月に+α文庫で出す山本作兵衛さんの『画文集 炭鉱(ヤマ)に生きる 地の底の人生記録』の魅力はいろいろあります。画の個性の強さ、美しさはもちろん、文章もひじょうに面白いのです。一つのノンフィクション作品として見ると、今ではとても書き表せない種類の人間のたくましさや強さが語られているのだと思います。
たとえば、大正時代の後半、未曾有の石炭ブームで各地の炭鉱が沸き返った頃の逸話なのだそうですが、「好景気のなかで何を思ったのか一坑夫は、4斗樽を飲み干してそのまま昇天した」という画があります。ふんどし一丁の裸の鉱夫が、大きな酒樽を両手に抱えて、注ぎ口から直接、自分の口に流し込んでいます。
本当に「何を思ったのか」、そんなことあるんですか!?と言いたくなるエピソードですよね。いくら好景気に浮かれても、死んだらオシマイではないですか。荒くれた、前後見境ないというか、その日その日を生きた男の姿を、おかしみが漂う一枚の画と文字で定着させています。
こんにちは、からまるです。
先週のエントリでお伝えしたように、からまるが初めて担当する文庫本は、+α文庫で出すことを提案した山本作兵衛さんの『画文集 炭鉱(ヤマ)に生きる 地の底の人生記録』となりました。長崎を旅したこと、軍艦島に上陸したことが縁になったのだと思います。
山本作兵衛さんが鉱夫として働いたのは筑豊の炭鉱です。いま、あの国宝の金印「漢委奴国王」を常設展示していることで有名な福岡市博物館で、開館25周年記念の特別展「世界記憶遺産・山本作兵衛の世界~記憶の坑道~」という展覧会が開催されています。作兵衛さんの画の展覧会としては、これまでで最大規模なのだそうです。
作兵衛さんの画は水彩絵の具で描かれた色彩がひじょうに綺麗なのです。本ではほとんどをモノクロでしか掲載できないので、本当は美しい生の色感を肉眼で見たいのですが、会期は今月26日まで。本当に残念ながら福岡に行くことは時間的に叶わぬようです。
ベストセラーの予感大の原稿を入稿中です。また来週に!
こんにちは、からまるです。
昨日のエントリ、「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に登録された話の続きです。軍艦島をはじめ、明治時代のいくつかの炭鉱が今回、遺産登録されることになったわけですが、当時の炭鉱の記録を画と文章で大量に残したものとして忘れてはならないのは、2011年に日本で初めて「世界記憶遺産」に登録された山本作兵衛さんの作品群です。
山本作兵衛さんの画と文を収録した本はいろいろありまして、講談社からは1967年に『画文集 炭鉱(ヤマ)に生きる 地の底の人生記録』という本が出ています。長らく絶版になっていたこの本を、2011年7月に「世界記憶遺産」登録記念として、かつての同僚が新装版で出版しました。
それをこのたび、+α文庫というレーベルで文庫化することになりました。この4月から、からまるは+α文庫と+α新書も担当するようになったことは、すでにお知らせしましたね。からまるは文庫を作るのが初めてなので、いったい何が文庫の企画にふさわしいのか、いろいろと考えていました。
5月初旬に、「明治日本の産業革命遺産」を、世界遺産委員会の諮問機関・国際記念物遺跡会議(ICOMOS)が世界遺産一覧表へ記載するのが適当と勧告したという報道が、昨日書いた軍艦島の強烈な記憶とともに頭の中にあるときに、ふと編集部で『新装版 画文集 炭鉱に生きる』を見つけました。
この本の舞台になっているのは筑豊だから今回の世界遺産の対象ではないけれど、時期と炭鉱は同じじゃないか。きっと登録を機に再び関心を持たれるにちがいないと思い、すぐさま販売の担当者に相談すると、観光客が多い9月のシルバーウィーク前に出しましょう!という話になりました。軍艦島が呼んだ縁なのでしょう。
こんにちは、からまるです。
ボンで開かれていたユネスコの第39回世界遺産委員会で7月5日、日本の「明治日本の産業革命遺産」が正式に世界遺産に登録されました。
登録された中で最も有名なのが長崎市端島、通称・軍艦島ですよね。海底炭鉱の島として栄え、南北480メートル、東西160メートルの面積に、一時は5000人以上が暮らしていたといいます。所帯持ちもずっと島の中での生活となるので、学校や商店街など暮らしに必要なものすべてが揃っていました。
からまるも2年ほど前に訪れたことがあるのです。写真でよく見る通りの景色が徐々に長崎港で乗ったツアーの船から見えてくるのですが、上陸して歩いたときの印象はものすごく強烈でしたね。ツアーガイドさんが、往事の様子を目の前の建物とつなげて活き活きと語ってくれます。それを聞きながら、明治から昭和にかけて、実際にここで夥しい数の人が暮らしていたのかと思うと、感傷的な気分をこらえることができませんでした。是非、訪問をお勧めします。
こんにちは、からまるです。
先週金曜日はこの日記を書くのをすっかり忘れていました!( ̄□ ̄;) たんなる健忘症であればいいのですが。。
昨日の日曜夜から今朝にかけて、からまるには三つの気がかりなことがありました。順番に挙げると、一つ目は、「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に正式登録されるかどうか。二つ目は、ギリシャの国民投票がEU側の提案受け容れを呑むのか呑まないのか。三つ目は女子サッカーのワールドカップ決勝戦で「なでしこ」ジャパンが勝つかどうか。
一つ目は文句なしのグッドニュースとなりました。この世界遺産登録はからまるの今の仕事と直結していて、もし万が一、日韓の調整が決裂してしまったら、その本の刊行はなくなってしまったのです。このお話は今度、書きますね。
二つ目は微妙です。日本の景気維持や世界経済の安定のためには、間違いなくバッドニュースです。実際、東京株式市場で株価は大幅に下げてしまいました。しかし、からまるの今の仕事からいうと、必ずしもバッドニュースでないところが、出版社の転んでもタダでは起きないスピリッツというところかもしれません。企画中の新刊は無事に進行しそうなのです。
三つ目は残念な結果となりました。からまるは8時10分からテレビの生中継を見始めましたが、その時点ですでに日本は2点を失っていて、その後もあれよあれよという間にアメリカに2点を奪われてしまいました。テレビ越しで見ても日米選手の身体能力の違いは大きそうでした。普通なら4点も失ったら戦意喪失となるのでしょうが、最後までよく戦ったと思います。
こんにちは、からまるです。
蛭子能収(えびす・よしかず)さんが何度目かのブームになっているようです。出演するテレビ番組が高視聴率を取っているそうですし、昨年8月に刊行されたエッセイ『ひとりぼっちを笑うな』(角川新書)がベストセラーになっていて、今も売れ続けています。いまちょうどそれを読んでいるところなのですが、群れない、自己主張しない、目出ちたくない、自由がいちばん大事といった主張が、つながり疲れた人の琴線に触れるのかもしれません。
じつは、からまるも、当時いたフリー編集者といっしょに、蛭子さんの本を出しているのです。『こんなオレでも働けた』というタイトルのエッセイ&漫画で、刊行は2007年5月でした。蛭子さんは漫画家として独立する前、ダスキンのセールスマンをしていたことがありました。あの蛭子さんが個人宅に飛び込み営業をしていたなんて、信じられます? 意外と営業所ナンバーワンだったのだそうです。
そういう「働くこと」にまつわる内容で、第一章は『ひとりぼっちを笑うな』と似ていて、「群れるなんてやめようよ」。この本は残念ながらあまり売れなかったのですが、スタンスの変わらない蛭子さんの主張が今、ベストセラーになるのは、時代のほうが変わったからなのでしょう。
『こんなオレでも働けた』は絶版ですが、アマゾンでは3389円から出品されているのが驚きです。