他社ながらアッパレな本、ルトガー・ブレグマンさん『隷属なき道』

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こんにちは、からまるです。

久しぶりにアッパレ本に出会いました。すでに話題の翻訳書、『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』(ルトガー・ブレグマン著、野方香方子訳、文藝春秋、5月刊)です。サブタイトルに「AIとの競争に勝つ」とあるように、この本も今進行中の鈴木貴博さん『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』の関連書の一冊として読んだのですが、AIの話はおもに第八章「AIとの競争には勝てない」に登場するだけ。本全体は、世界から貧困をなくすために、これまでの思い込みや常識に縛られず、しかも具体的な政策に踏み込んで書かれた、左派陣営からの行動宣言書といったスケールの大きな本です。

何と言っても最新の学術研究やデータの使い方がうまいですね。ひじょうに説得力があります。たとえば、第三章「貧困は個人のIQを一三ポイントも低下させる」で使われている二つのグラフです。世界各国における社会問題の発生率と一人当たりGDPの関係では有意な傾向は見られないのに(前者後者ともに突出して高いのはアメリカだという結果はわかるものの)、これを社会問題の発生率と各国における「上位20%の最富裕層と下位20%の最貧困層とのギャップ」の関係でグラフを引き直すと、はっきり有意な傾向が見られます(このグラフには日本人にとってうれしいデータもありますね)。「相対的貧困」、つまり格差と不平等が社会問題を引き起しているとする著者の主張が劇的に裏付けられるように書かれています(p69)。

目配りも行き届いています。アメリカのドナルド・トランプ大統領の手法を「ショッキングで破壊的なアイデアを公表して、それ以外のアイデアを、比較的穏当で、まともに見えるようにする」ワザ(政策に対する「許容性の窓」=「オヴァートンの窓」をずらす)をマスターした政治家であると評価しています。このような観察をからまるは初めて知りました。その他にもいろいろ指摘したいことがあって、読書会を企画したいくらい。この29歳の才能には驚きを感じます。

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このページは、karamaruが2017年7月21日 12:34に書いたブログ記事です。

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